"Story of puppet"展に寄せて

 

スーホ・ムーン、佐久間奏多、林由未。三人の若いアーティストは、いずれもチェコ国立芸術アカデミー人形劇学部の大学院で学び、舞台デザインの修士号を授かった。大学での研究の間に、彼らは、ひとつの強烈な個性に出会う。ヤロスラブ・ドレジャル。木彫り作品に強いこだわりを持つ、現代のチェコを代表する最高のパペット作家の一人だ。この展覧会では、三人の若いアーティストと彼らが敬愛する師が、それぞれの個人的かつ文化的な経験に根ざしたパペットに対する固有の概念と理解をぶつけ合う。

スーホ・ムーンは、人間の存在それ自体、そして人間の感情と記憶をテーマとして追求している。いったいパペットはどんな感情を表現できるのだろう?

林由未は、私たちの内面や周囲にある超自然的存在や悪霊に感心がある。私たち一人ひとりの内側に光と影があるように、林によれば、パペットも自らのうちに光と影の両面を持つのだ。

佐久間奏多は、ヨーロッパのおとぎ話に感心がある。彼は、おとぎ話とその視覚化の最善の交点を探っている。

演劇的な観点からすれば、パペットは演者が手を貸したときにのみ意味を獲得する。しかし、パペットは芝居という目的のために消費し尽くされるものではない。パペットは自立した被造物でもあるのだ。パペットとしての美学を持ちながらも、決して舞台上での演技を意図して作られなかったドレジャルの彫刻作品の数々を見れば、そのことは明らかだ。舞台で演じる「役者」という枠を超えて、パペットの内なる物語りを表現したい。彼らはそう語る。

Pavel Kalfus / パベル・カルフス

(チェコ国立芸術アカデミー人形劇学部舞台美術科主任教授 / 舞台人形美術家)